非線形解析セミナーの記録(2024年度)

日時 8月5日(月) 16時45分〜(通常と曜日が異なります)
場所 矢上キャンパス14棟733室
講演者 熊谷隆 氏 (早稲田大学)
講演題目 トラップモデルの熱核評価と定量的均質化
講演要旨 連続時間ランダムウォークで,各々の頂点における指数滞在時間の平均もランダムなモデルを考える. 特に,この平均が裾の重い分布(ヘヴィーテイル)の時,粒子は滞在時間の平均が大きい点に長く留まる,つまりその点がトラップになり異常拡散現象が生じる. このようなモデルはブショー(Bouchaud)のトラップモデルと呼ばれ,これまでに様々な研究がなされてきた. (例えば,高次元ブショートラップモデルのスケール極限には,分数冪時間微分拡散方程式に対応する,ブラウン運動の時間変更過程が現れる.) 本講演では,1次元ブショートラップモデルのスケール極限,熱核の振動,定量的均質化に関する成果を報告する. 特に,トラップの分布の裾の重さを表すパラメータを変化させることで,これらの性質がどのように変化するかについて述べる. 本講演の内容は,S. Andres氏(Braunschweig工科大学)D. Croydon氏(京都大学)との共同研究に基づく.

日時 7月19日(金) 16時45分〜
場所 矢上キャンパス14棟733室
講演者 高橋仁 氏 (東京工業大学)
講演題目 Sobolev 優臨界な半線形熱方程式における臨界ノルム爆発について
講演要旨 冪乗型の非線形項を持つ半線形熱方程式を考える. この方程式にはスケール不変性があり,臨界ノルム(スケール不変な Lebesgue ノルム)が定まる. 本発表では,解の上限ノルムが有限時間で爆発するとき臨界ノルムも爆発するか,という問題を考える. 主結果では,非線形項の冪が Sobolev の臨界指数よりも大きいとき,解の球対称性や爆発のタイプによらず, 上限ノルムの爆発時刻において臨界ノルムも常に爆発するということを示す. なお本発表の内容は三浦英之氏(東京工業大学)との共同研究にもとづく.

日時 6月21日(金) 16時45分〜
場所 矢上キャンパス14棟733室
講演者 高山正宏 氏 (慶應義塾大学)
講演題目 A priori estimates for solutions to equations of motion of an inextensible hanging string
講演要旨 We consider the initial boundary value problem to equations of motion of an inextensible hanging string of finite length under the action of the gravity. In this problem, the tension of the string is also an unknown quantity. We derive a priori estimates for solutions to the initial boundary value problem in weighted Sobolev spaces under a natural stability condition. This talk is based on a joint work with Professor Tatsuo Iguchi (Keio Univ.).

日時 5月17日(金) 15時00分〜
場所 矢上キャンパス14棟631A室(通常と場所・時間が異なります)
講演者 Qing Liu 氏 (OIST)
Xiaodan Zhou 氏 (OIST)
講演題目 Qing Liu 氏
A PDE-based approach to Borell-Brascamp-Lieb inequality

Xiaodan Zhou 氏
Uniqueness of Green functions in metric spaces, yes and no
講演要旨 Qing Liu 氏
In this talk, we provide a new PDE perspective for the celebrated Borell-Brascamp-Lieb inequality. In contrast to previously known proofs involving techniques from convex analysis or optimal transport, our new proof is based on properties of diffusion equations of porous medium type, including a generalized concavity maximum principle and large time asymptotics. Our approach reveals a deep connection between the Borell-Brascamp-Lieb inequality and nonlinear parabolic equations. We also recover the equality condition in the special case of the Prekopa-Leindler inequality by further exploiting additional properties of the heat equation. This talk is based on recent joint work with Kazuhiro Ishige and Paolo Salani. PDF版

Xiaodan Zhou 氏
Zhou 氏の講演要旨

日時 4月19日(金) 17時00分〜
場所 矢上キャンパス14棟733室
講演者 高橋博樹 氏(慶應義塾大学)
講演題目 ヘテロケイオス力学系の周期軌道の分布と大偏差原理について
講演要旨 区間や円周など、1次元多様体上の写像の反復合成による力学系の構造 についてはすでに膨大な研究がなされ、精密な理解が得られている。 今後の研究の課題は高次元、すなわち2次元以上の多様体の上の力学系であり、 重要な未解決問題が多く残されている。
 本講演では、高次元力学系を理解するためのトイモデルとして 講演者らが最近導入した「ヘテロケイオス・ベーカーマップ」 という具体的な力学系を紹介する。その定義自体は中学生でも理解可能だが、 その力学系の構造は非常に複雑になる。本講演では特に ヘテロケイオス・ベーカーマップの周期軌道に焦点を絞り、 複雑さの一端を理解しようとする試み、およびこれまでに得られた成果を報告する。
 本講演内容の一部は斎木吉隆氏(一橋大)、James A. Yorke氏(Univ. Maryland)、 山本謙一郎氏(長岡技科大)との共同研究に基づく。


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